「食べる映画」と題するコーナーで、この作品を外すわけにはいきません。大本命なので、早いうちに紹介しておきます。
原作は、2002年12月〜2005年7月に「月刊アフタヌーン」に連載された、五十嵐大介さんの漫画だと聞いています(読んだことはありませんが)。映画が原作を超えるのはなかなか難しいものです。でも、私はこの作品の世界観、映像表現がとても好きです。もし、これから原作を読んでも、その印象が覆ることはないと信じています。ちなみに、韓国でも映画化されていますが、圧倒的に日本版の方がいいです。
簡単にいうと、東北の小さな集落に1人で暮らす若い女性の、半自給的な日常を淡々と綴ったものです。ストーリーにも表現にも妙なリアリティがあって、無理に盛り上げようとしない心地よさがあります。
特に食事をつくるシーン、食べるシーンは出色です。作り方に関しては、〝レシピ付き〟という感じで、詳しく工程まで紹介してくれます。「食べること=生きること、暮らすこと」を自然な形で実感させてくれる、食べもの愛に満ちた心地よい映画です。「自給自足、農業、手作り、発酵、田舎暮らし」などのワードに反応するタイプの方にとっては、たまらない作品だと思います。
とにかく、見てない方は「いっぺん、見てください」。
というわけで、映画内には食べもののことが満ち溢れていて、それぞれにとても印象的なエピソードが綴られていますが、あえて一つを選ぶとしたらやはりウスターソースでしょうか。失踪した母が手作りしていたという、トマトもたまねぎもりんごも入らない醤油ベースの手作りソースです。どんな味がするのか、全く想像かつきません。だから作ってみたくなりました。
行程と材料はこんな感じです。
鍋に水を張ってだし昆布、クローブ、粒こしょう、青山椒の味醂漬け、月桂樹の葉、セージ、タイム、唐辛子と、みじん切りにしたにんじん、生姜、セロリを投入。中火で半分になるまで煮詰める。これに、醤油、酢、みりん、ザラメを加えて1時間さらに煮る。好みでジャムや香辛料で味を調整し、さらしで濾して出来上がり。
問題はだし汁と醤油、酢、みりん、砂糖の割合です。映画には具体的な分量は出てきません。でも映像で判断する限り、だし昆布は20cmくらい、クローブは10粒、粒こしょうは30粒、山椒の実は20粒、月桂樹2枚、唐辛子1本、セロリとにんじんは各1本、しょうがは3かけくらいでしょうか。
作り始める前にネットで検索してみたら、結構いるんですね、このウスターソースを作ってる人が。その人たちの食べた感想に共通するのは「薄味」だということでした。確かに、映画では最初に野菜を煮る鍋は結構大きく、水もたっぷり入っていました。これを半分に煮詰めるにしても、だし汁はかなりの量です。それに対し、入れるしょうゆや酢、みりんは、500mlの計量カップに収まるくらいでした。想像しただけでも薄そうです。
いずれにしても正解の味はわからないので、自分の好みに合わせてアレンジすることにしました。私はポン酢が好きで、コロッケにもポン酢をかけます。そんなイメージで、味の着地点を探すことにしました。
まず、最初の野菜を煮る水は1000ccに決定。半分になるくらい煮込むとあったので、30分のタイマーをかけて放っておいたら3分の1くらいまで煮詰まってしまいました。濃いめに仕上げるんならいいかと、そこにしょうゆ300cc、酢200cc、みりん100cc、砂糖(ザラメがなかったので自社ブランドのサトウキビ糖)300gを入れました。そして、さらに煮込むこと40分。映画では1時間煮込むとありましたが、元のだしが少なかったこともあって(300ccくらい)、濃くなりすぎそうだったので、40分で火を止めました。完成品は400ccになりました。

出来栄えは…。しっかりした味の、少し酸味の強いしょうゆだれになりました。かなりいい感じになったと思います。少なくとも、頭の中に描いていたウスターソースとポン酢の中間みたいな味にはなりました。映画にならってコロッケにかけてみましたが、上等です。今度、お店でコロッケ定食でも出す機会があったら、ぜひこのソースを付けてみたくなりました。
主演の橋本愛さんは、映画の中でこう言っていました。
「言葉は当てにならないけれど、私の体が感じたことなら信じられる」
橋本さん、私も感じさせてもらいましたよ、ウスターソースの味。

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