お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈1〉

中年男はなぜ、旅に出たいのか  灼熱の夏が過ぎ、3年前の記憶が断片的に蘇る。              * 1999年7月31日。 夕方の鹿児島県坊津港。「どっからきたのぉ」 振り返ると70歳過...
お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈2〉

九州一周を思い立ったもうひとつの理由  18年ぶりに東京を離れ、九州・熊本の故郷にUターンすることを最終的に思い切れた理由のひとつに、天草の海の存在があった。   有明海、不知火海という2つの内海を持つこの海域は、ボートで遊ぶ...
お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈3〉

 ただ単に、九州を一周するということだけが目的だとつまらない。釣りもしたい。キャンプも楽しみたい。もちろん、旨い魚も喰いたい。 できるだけのんびりと時間を掛けて回りながら、付加的な遊びを楽しみたいと思った。  僕のモントークはホンダ...
お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈4〉

有頂天の準備段階  だいたいのコースは、コンピュータに入っている地図ソフトを頼りに大雑把に決めていったのだが、本当に各港で係留が可能なのか、給油はできるのか、近くにテントを張れる場所はあるのか、買い物はできるのかなど、確認作業をしな...
お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈5〉

7月30日、スタート  その他、細々したものも色々と必要になった。チャートが濡れないようにするための防水クリアケースと携帯電話の防水ケース。港での買い出し用折り畳みカートなどなど。テント、ロールマット、清水タンク(20�P)、食器や...
お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈6〉

「現在、九州一周航海のため 留守にしております」  1999年7月31日。  午前10時にホームポートである熊本県天草郡大矢野島にあるイースタンマリーナを出港、走り慣れた不知火海を南下する。  快晴。風もなく、海面はほぼベタの状態。...
お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈7〉

消えたレイバンは 東シナ海の洗礼 それまで真っ平だった水平線は、ギザギザになっている。波高は1.5~2mほど。ところどころに白波が立つ程度の風で、ほぼ真向かい。南南東だ。 回転数を4800に落とし、18ノットで走る。一応、予定のスピ...
お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈8〉

大平洋のうねりと 夢と消えたカツオのタタキ  野間岬を回り込んだ途端、右舷前方より2~3mのうねりを受ける事になった。ただ幸いに風はあまり強くない。スピードを落とせば、無理なく走れる状態である。  我がボストンホエラー・モントーク1...
お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈9〉

強風と満天の星空で迎えた 坊津の初夜  やることはたくさんあった。テントの設営場所・係留場所の確保、夕食の食材調達、給油、天候と釣り場の情報収集。まずは、スタンドが閉まる前に給油を行わなければいけないので、事前に漁協で教えてもらって...
お父さんの夏休み

お父さんの夏休み〈10〉

8月1日、未明  真夜中、テントを叩く風と雨の音で目が覚めた。目を開いても、何も見えない。真の闇である。 隣では、高橋さんの寝息が聞こえる。手探りで懐中電灯を探し、時計を見る。午前3時半。ファスナーを開いて、顔だけをテントの外に出し...
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