「荒野の決闘」

食べる映画と本

「食べる映画」というと、料理人が主人公だったり、食べるシーンが多く登場する映画の紹介ということになるのでしょうが、第1回目は料理や食べるシーンが主役ではない映画となります。

ご紹介するのは「荒野の決闘」。1946年にジョン・フォード監督がヘンリー・フォンダの主演で撮った西部劇の名作です。食事のシーンが出てくるのは映画の冒頭、西部劇ではよく見かける野宿の場面。時間にして約1分ほどです。小学校の頃、最初にこの映画を見て以来、主役のヘンリー・フォンダが食べていた真鍮(?)の皿の上にのった得体の知れない食べ物のことがずっと気になっていました。ついでに、食べ終わった皿を水で洗わずに、砂で食べかすを落としておしまいということにも衝撃を受けました。

同じく西部劇の名作「駅馬車」にも、これと同じような食べ物が出てきます。こちらは食堂で食べるシーンですが、何やら水分の少ないベチャとした豆料理のようなもので、主役のジョン・ウエインはパンに付けて食べていたように思います。

その後、似非映画少年となっていった私が傾倒したアメリカン・ニューシネマでもこの料理を発見しました。「明日に向かって撃て」です。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードがキャサリン・ロスの手料理を食べるシーンです。こちらは、前出の2作品と違ってカラーなので、この料理が赤い色をしていることが判明しました。当時、インターネットがあれば何という料理か、どうやって作るのかもすぐに分かったのでしょうが、幸いに革命前夜の時代です。大いに妄想を膨らますことができました。

その後、趣味のアウトドアでダッチオーブンを使うようになり、トライポッド(鍋を吊るす3本支柱の焚き火用道具)で野外料理を楽しむうち、「荒野の決闘」を見たときの妄想が再燃してきました。これであの料理を作ってみたい。そう思ってたどり着いたのがポークビーンズでした。作ってみると、確かに妄想していたものに近い。赤いし、豆だし、どろっとしている。作るのも簡単。豚肉とたまねぎを炒めてトマト缶と少々の水、豆(私は大豆の水煮を使っていました)を加えて煮るだけ。簡単なのもアウトドア向きだし、冷めても美味しい。わが家のキャンプメニューの定番となっていきました。

錆にまみれたトライポッドと愛用のダッチオーブンです

しかし、近年。改めて調べてみると、あれは「チリコンカーン」だったのではないかと思うようになりました。地理的に考えても、メキシコから伝わったとされる「チリコンカーン」の方が有力だし、豆も大豆ではなくキドニービーンズ(赤インゲン豆)の方がそれらしい(当時はアメリカで大豆を食べる習慣はなかったという話もあります)。でも、「チリコンカーン」は牛(ひき)肉を使うレシピが多く、一方でカウボーイが野宿料理に使っていたのは保存性の高い塩漬けの豚肉だったようにも思います。う〜ん、真実は何処に。

というわけで、たぶんこれが一番に映画に近いだろうという思い込みで、キドニービーンズとベーコンを使ったチリコンカーンを作ってみました。ちょっとスパイシーにもしたかったので、クミンとコリアンダーも入れました。もちろん、チリパウダーも。基本的な作り方はポークビーンズと変わりません。本当はダッチオーブンと薪でやりたかたのですが、少量を作ったのでストウヴの鍋で代用です。

出来栄えは…。なかりうまいです。ベーコンでもいけます。暑い夏の定番メニュー入りが決定です。でも、タマネギとトマト、クミンとコリアンダーという組み合わせは、いつも作っているスパイスカレーと同じであることに気づきました。スパイスを入れすぎると、カレーに寄っていきます。ここの境目ははっきりさせておくべきしょう。

ヘンリー・フォンダが食べていた料理には、スパイスは入っていたのでしょうか。料理担当だった若い弟は「お前は料理上手だな」ってお兄さんたちに言われていたので、もしかしたらスパイスも駆使していたのかもしれません。

まあ、妄想するのは楽しいものです。もちろん、料理をすることも。

荒野の決闘【Blu-ray】 [ ヘンリー・フォンダ ]

価格:1,742円
(2022/7/18 15:51時点)
感想(0件)

荒野の決闘(字幕版)
伝説の保安官ワイアット・アープは親友で医者くずれのドグ・ホリディの協力を得て、牛泥棒のクラントン一家とOK牧場で死闘を展開する。寡黙で無骨なフォンダとニヒルな伊達男マチュアで、ジョン・フォード監督は男の哀愁を見事に描いた。ワイアットとクレメンタインの一本道での別れ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました