九州の食卓のカフェでランチの提供を行っていて(2022年7月現在休止中)、お粥やおむすびの御膳に小さなお惣菜を5品ほど付けていたのですが、その中でも特に人気が高かったのが「椎茸の南蛮漬け」でした。
提供していた惣菜は、基本的に九州の食卓の誌面で紹介したレシピを元に作っていたのですが、これは例外でした。お仕事で熊本県椎茸農業協同組合のWEBサイトを作らせてもらった際に、レシピ紹介のコンテンツ用に撮影した一品です。撮影後に試食させてもらったところ、とてもおいしかったのでランチメニューに加えさせてもらうことにしました。
椎茸というのは、昭和の時代にあっては主役級の食材でしたが、残念ながら令和ではかなり影が薄くなっています。今の人は、冬の鍋に入れるくらいでしょうか。昭和の定番、お吸い物や茶碗蒸しなども食卓から姿を消してしまったようです。乾物としての乾しいたけに至っては、若い人の家庭では絶滅危惧食材になっている気がします。
その復権を目指すためにも、椎茸の美味しい食べ方をご紹介しようと思い立ちました。
作り方はとっても簡単。同量の酢と醤油と砂糖で作った南蛮酢に、片栗粉をまぶして揚げた椎茸を漬け込むだけ(お店では砂糖の量を少し減らしていました)。派手ではありませんが、普通にしみじみとおいしい一品です。
では、早速作ってみます。
材料は椎茸、たまねぎ、にんじん、白髪ねぎ用のねぎです。オリジナルレシピは乾しいたけを使うものですが、店では生を使っていました。お店がある菊池は、熊本県内でも有数の原木椎茸の産地で、近所の直売所には手頃な価格で売られているのです。どうしても手に入らない時は菌床しいたけを使うこともありましたが、やはり肉厚の原木椎茸が断然おいしいです。
椎茸の旬は春と秋。春の椎茸は「春子」、秋の椎茸は「秋子」と呼ばれます。もちろん、乾しいたけを使えば、一年中楽しめます。乾しいたけを戻す際は、前の晩から水につけておきます。大豆やいりこもそうですが、「前の晩から水に浸ける」のが面倒だとおっしゃる方が多い。特に若い方に。でも、習慣化すれば、全く苦になりません。そして、これをやれば幸せになれます。騙されたと思って、ぜひやってみてください。それから、戻し汁は煮物などに使ってくださいね。くれぐれも捨てないように。
最初に椎茸20枚くらいををカットしますが、大きいものは4等分か3等分、中くらいのは半分、小さいのはそのまま使っていました。南蛮酢の味が結構濃いので、小さすぎると食べた時に椎茸の旨みよりも、たれの味の方が口の中を支配してしまいます。まあ、このあたりはお好みで。20枚が多すぎるという方は適当に量を減らし、南蛮酢の方もそれに合わせて調整してください。
椎茸の「石づき」は落としますが、「軸」は使います。「石づき」は原木や菌床と接していた先端部分のことで、黒っぽくて硬くなっています。その上のやわらかくて白いところが「軸」です。ここは食べられます。捨てないように。切った椎茸は、片栗粉をまぶして油で揚げます。
南蛮酢に入れるたまねぎとにんじんを切ります。たまねぎ1/2は薄切り、にんじん1/3は細めの千切りにします。フライパンに菜種油を引き、私はスライスしたにんにくを炒めてテンパリングしてましたが、これはお好みです。たまねぎとにんじんを入れて炒め、しんなりしてきたら100ccの酢と醤油、80gの砂糖を加えます。ひと煮立ちしたら火を止め、バットなどに移します。強火でガッーといって、ぶくぶくしてきたらパッと火を止める感じです。辛いのが好きな方は、唐辛子を輪切りにして入れるのもおすすめです。
南蛮酢を入れたバットに、揚げた椎茸を入れ、時々かき混ぜます。椎茸がしっとりと落ち着いたら完成です。すぐに食べても美味しいですが、2日目、3日目の濃厚な味もイケます。トッピングは白髪ねぎで。面倒ですが、この一手間が食卓を豊かにします。
酒の肴にもぴったりですね。米焼酎のロックなどと一緒にいかがでしょう。
[レシピダイジェスト]
1、菜種油ににんにくを入れて、テンパリング。香りが立ってきたら、千切りしたにんじん1/3本とたまねぎ1/2を入れて炒める。
2、たまねぎとにんじんがしんなりしたら、酢100cc、醤油100cc、砂糖80gを入れて煮立たせ、すぐ火を止める。
3、南蛮酢をバットなどに移し、片栗粉をまぶして揚げたしいたけを漬け込む。お好みで唐辛子を入れてもおいしい。トッピングは白髪ねぎなど。
オリジナルのレシピはこちら
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