お父さんの夏休み〈21〉

お父さんの夏休み
快適なテント生活

 そうと決まれば、いかに快適にここで過ごすかを考えなければならない。周囲を探索した結果 、荷揚場の隣に使っていない倉庫があることが判明。このスペースを使わせてもらえないかの交渉を行う事にする。
「ううん」
 さすがに課長も考え込んだ。いかに使っていない倉庫とはいえ、身も知らない人間に不用意に貸すわけにはいかない。
「では、こうしましょう」
 結局、船舶免許のコピーを預け、電気、水道を含めたスペースの使用料として3日分・3000円を支払う事になった。
「ありがとうございます」  雨風が完全にしのげる格安のねぐらが確保できて、我々は有頂天だった。課長と一緒に倉庫に入って点検してみる。正確には倉庫というより、雑多なものが置かれている事務所である。16畳ほどの広さがあるが、もう随分使っていないらしく床には5ミリほど埃が積もっている。
「出るかな?」
 課長がキッチンの蛇口をひねると、一瞬躊躇した後に勢いよく水が弾き出てきた。
「つくかな?」
 今度はエアコンのスイッチを入れると、ブーンと室外機の音がし始めた。
「使っていいんですか?」
「どうぞ」
 なんと、照明、キッチン、エアコン付きである。埃ダニがいそうだが、そんなことはかまっていられない。
 課長にお礼を言って別れると、テントの設営を開始した。埃から居住スペースを守るためである。クーラーでテーブルと椅子をこしらえると、大層居心地のいい空間が出来上がった。ここが「台風ろう城」を決め込む、我々のねぐらである。とにかく、エアコン付きというのが素晴らしい。どんな嵐が来ても安眠がむさぼれる。料理も作れる。本も読める。内之浦での滞在は、妙に快適な3日間となったのである。

事務所の中にテントを張らせてもらう。何とエアコン付である
炊事場まである。こんな快適なキャンプは初めてだった
天候の回復が遅れるたびに、航行計画を練り直した

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